a0007_002181債務超過であってもまだあきらめる必要はない。

現在の経営者の経営権を守りながら再生を果たす方法は存在する。

Aさんはアパレル事業を経営している。

主な事業部としては百貨店、デパートに服を卸している卸売事業部と楽天を利用して自社の服を販売している通販事業部がある。

折からの不況で売上はジリ貧になり、債務超過で銀行融資も受けられず倒産は時間の問題となっている。 

が、通販事業部だけはかろうじて黒字を維持している。 

金融債務が7億、一般債務が3億ある。

この場合、採算部門である通販事業部を新会社に、不採算部門である卸売事業部を旧会社に残す形で再生を試みる。

会社の置かれた状況によって様々な組織再編が考えられるが、ここでは会社分割による手法を説明したいと思う。

ポイントは金融債務、係争債務、国税を旧会社(甲)に残し、その他の債務を新会社(乙)に移管する。ここでは新設物的分割による。

商号続用の問題(商法22条の適用)があるので、甲の社名は避けたほうが良い。

分割後速やかに甲の住所、本店所在地をしかるべきところに移転する。

甲に債務の履行可能性があるように下地を作っておく。

分割後、甲の貸借対照表の資産の部に乙の株式が計上される。

この時点で甲の100%子会社となる。

しかるべきときに甲は乙の株式を乙の出資者に売却する。

乙の株主は甲に預託金を払い込む。この時点で甲と乙の資本関係は切断される。

法人税法上の非適格となる。

甲の代表者はそのまま会社を清算して、実質乙の経営に注力する。

アウトラインは以上であるが、この手法を使う際には細心の注意を払わないと様々なリスクが生じる。その道の専門家、弁護士、公認会計士、税理士、司法書士などと綿密な作戦を立てた上で実施した方が良い。

詐害行為取消権、会社分割無効の訴え、法人格否認の法理等のリスクは回避せねばならない。


ここである種の質問が生じる。

債権者の同意が必要になるのでは ?

同意は不要だが、保護手続きは必要である。

債権者一般に対する公告、知れたる債権者に対する催告など。

それでも同意が得られず、異議を申し立てるのでは ?

公告も催告もしなくていい場合がある。

それは分割前と分割後とで債権回収可能性が変わらない場合である。

要件として

1. 物的分割であること
  乙の株式が甲に割り当てられるので純資産に変更はない。
2. 分割後であっても債権者が甲に分割前と同様に債権の請求ができる場合


このように会社法上合法的に再生する道があることを知るべきである。

具体的な戦略については次の機会に委ねたいと思う。

乙の代表者を誰にするか。

滞納税金はどうなるのか。国税徴収法38条の第二次納税義務の問題。

乙は融資を受けられるのか。

許認可は大丈夫か。

債務免除益をカバーする方法は。

いろいろ気をつけねばならない点がある。



どんなときでもなんとかなるものである。

決してあきらめず生き残る道を探し出そう。

人生何があっても上り坂。

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