a1080_000087最近、自己破産ならない債権者破産の申し立てが増えている。

会社が行き詰って、任意整理で乗り切ろうと奮闘しているときに

早く不良債権を処理したい債権者が敢て予納金を積んで

破産の申し立てを行うのである。

特異なケースだが、最近増えているので過去の記事を参考に

してみた。


先般、依頼者からの一本の電話を受けて、唖然とした。

内容は債権者破産の申し立てをされた社長(債務者)が、破産開始決定を受け、同時に

免責の申し立てをしたが、別の債権者から債務者の行為が民法709条の不法行為に

該当するから、非免責債権として免責許可決定の効果は及ばないとの主張である。

債務者は法人の代表者であり、個人の連帯保証人としての責任がある故、また法人に

目ぼしい資産がないため、個人に対して破産の申し立てを受けたものだった。


事業としては今後存続は見込めないため、新たな人生を歩みだした矢先であった。

普段から、真面目な経営者で特に免責不許可事由(破産法252条)も見当たらないゆえ、

裁判所からも免責許可決定がでる予定である。でれば、債務自体は自然債務として

残るが、責任は消滅するゆえ、債権者からの追及は以後なくなる。


そうなると困るのが債権者である。

いろいろとこじつけて法人の代表としての債務者の行為が不法行為に当たるとの主張である。

具体的には、商品を騙し取って買掛金も払わず、私的に流用したとの主張である。

気持ちはわからないでもないが、正当な商取引として行われているものであり、借り手責任

がある一方で貸し手責任もあるのが商売である。

長年の取引の中で、商品を供給し続けそれなりの利益を上げてきた債権者の方にも落ち度が

ある。この場合、決まってあなたを信用していたのに裏切られたという債権者感情が先立つ。

客観的に見るとどっちもどっちなのである。

それに、そもそも破産法253条の1項2号の破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償

請求権でいう「悪意」の解釈については注意を要する。

同条の立法趣旨は、破産者の経済的更生を速やかに図る一方で、著しく破産債権者に対して

不誠実な行為をした破産者まで免責の効果を与えるべきではないという点にある。したがっ

て、同条にいう「悪意」とは通常の故意以上の専ら破産債権者をして積極的に害する意図と

限定解釈するのが妥当であり、このことは3号の反対解釈からも頷ける。

というのが裁判所の立場だ。

本件では、先に述べたとおり、破産者には確かに落ち度があったかもしれないが、それが

すなわち破産債権者を積極的に害する意図をもってした行為とまで言えないのが明らかであ

る。したがって、同条に言う悪意には該当せず、債権者の主張は認められないということにな

る。


代理人である弁護士を通じて、ほぼ上記の抗弁を破産管財人に提出したところ、裁判官の意

見も同様であり、無事免責許可決定がでたとの報告を受けた。


やれやれである。

それにしても債権者の執念はすさまじいものがある。

気持ちはわからないではないが、法治国家の枠組みの中ではかような

事態も考えられることから日々の与信管理とともに予防医学ならない予防法学

も頭に入れておいたほうがよさそうである。


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